Damask Rose [短編集]
「こんな形で伝えるつもり、なかったんだけど」
壱也がいったん言葉を切って、息を吸い込んでから吐き出した。
「俺は…柚にしかドキドキしないし、柚しか可愛いって思えない。ごめん、何か俺本当に…重症かも」
何て言ったら良いんだろう。
心臓がすっごくうるさくて、壱也が照れた顔を隠す仕草にもドキドキしてる。
「今すぐじゃなくて良いから、柚の返事聞かせて」
「ダメ…」
一瞬壱也の顔に寂しそうな表情が浮かんだ。
「あのね、違うの…ダメってそういう事じゃなくて。今聞いてくれなきゃ嫌…。私だって、壱也にしかドキドキしないよ」
私もいったん言葉を切る。
「壱也だから苦しくなるし、壱也じゃなきゃ隣にいてほしくないよ…」
「うん、ありがとう。言ってんの柚なのに、すっげぇ恥ずかしい」
壱也が顔を逸らした。
そんな事言うから、私だって恥ずかしいじゃない!
「柚…」
壁際に立っていた私の名前を呼んで、それから壱也が私を囲むように腕を壁についた。
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