母の心音(こころね)
「今日は九月二十五日で、十六号台風が来てな。主人は稲はだを見に行ったんや。台風で倒れておるかもしれんでな。雨戸を閉めると家の中は真っ暗や。雨戸に吹付ける雨の音だけが聞えてそれ以外の音は何もないんや。暗い家の中で独り居たんや、そりゃ長い時間やった。そしてな、自分の幼かった頃を思い出して居ったんや。随分昔のことやけど。あの頃遊んだ友達は今ごろどうしとるやろか、同じように寂しい思いをしとるんやろな。そう思ってな、昔が蘇ってきたんや」



卒業の
時に別れし学友の
遠き昔を忍ばるる今

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