母の心音(こころね)
「十月二日、やっと稲刈りが終わったんや。あの頃は長男も次男もよう手伝ってくれた。刈り取られた田圃に杭を打って、その杭に二段に横棒を縛り付けてな、稲束をそこに掛けるんや。あの頃が目に浮かぶんや。今は主人と二人きりや。刈り取った後の田圃は土肌が見えて、稲穂が賑やかにあった田圃とは違うて、役目を終えたようにひっそりとしとるんや。これから寒い冬が来るんや。そう思うてな、仕事が終わったのは夕方やった。帰り道に疲れた体でその田圃を見下ろしたんや。土はだが剥き出しになって黒々した田圃に、二段積みの稲はだがそびえ立って見えたんや。太陽が沈んで薄暗くなった田圃にな。それはそれは物々しくそびえ立って見えたんや、ようやったわ」
見渡せば
立ち並びたる稲はだの
物々しげな秋の夕暮れ
見渡せば
立ち並びたる稲はだの
物々しげな秋の夕暮れ