母の心音(こころね)
「五月十五日、末娘も居なくなったし、長女一家も帰ってしもうた。長男一家が居てくれて、そりゃ賑やかや。だけどな、手伝うてくれんし、仕事は独りでやるんや。最近歳を感じて、仕事をしながら思うんや。昔はな、若い者も皆家に居ってな、仕事は若い者の手でやったんや。今はな、子供は親元を離れて、仕事をするようになったし、農業は年寄りの仕事になってしもうたんや。昔はな、若い者に仕事を譲って、年寄りは安心やったけど、今は、年寄りがやらんとあかんのや。昔の年寄りは、邪魔扱いされて、小さくなって居った。そやけど、今の年寄りは、責任もってやらんとあかんのや。自由に仕事をやれるんやって、そう自分に言い聞かせてな、仕事をしとるんや」



若き手は
時代の波に抜かれしが
老いの身なれど自由ありけり


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