†Orion†


「雅人くんは何学部なんだ?」



醤油挿しに手を伸ばしながら、浩平さんが訊く。



「俺は――……」



伸びた浩平さんの手に、俺の視線が自然と向く。

そして、思わず、すらりと伸びた細長い指を凝視してしまう。


左手、薬指。

そこは、優菜さんと同じく何も嵌められていなかった。



「雅人くん?」


「あっ、あぁ、えと、経営学部です」


「経営学部かぁ。それもすごいな。俺には無理だ」



笑う浩平さんの声で我に返り、俺は、彼の左手から視線をそらした。



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