†Orion†
五時なら問題ない、と思った。
その時間、杉浦さんはもう店にいないはずだから。
一緒に店に行くことを承諾すると、弘美は安心したように笑った。
弘美が恋愛感情抜きの純粋な女友達とはいえ、俺が否定しても、事情を深く知らない人は彼女だと思うに違いない。
杉浦さんに、そう思われることが嫌だった。
弘美を連れて店に着いたのは、四時半過ぎ。
この時間帯は裏口のドアは施錠されていて、客と同じように表の入り口から店に入る。
杉浦さんが店にいないことは分かりきっていたから、俺は弘美と肩を並べて、堂々と店に入った。
「あ、お疲れさまー」
「………っ!?」
ズンズンと先に進む俺の足を止めたのは、背後からかけられた聞き覚えのある声だった。