†Orion†


五時なら問題ない、と思った。

その時間、杉浦さんはもう店にいないはずだから。

一緒に店に行くことを承諾すると、弘美は安心したように笑った。


弘美が恋愛感情抜きの純粋な女友達とはいえ、俺が否定しても、事情を深く知らない人は彼女だと思うに違いない。

杉浦さんに、そう思われることが嫌だった。



弘美を連れて店に着いたのは、四時半過ぎ。

この時間帯は裏口のドアは施錠されていて、客と同じように表の入り口から店に入る。

杉浦さんが店にいないことは分かりきっていたから、俺は弘美と肩を並べて、堂々と店に入った。



「あ、お疲れさまー」


「………っ!?」



ズンズンと先に進む俺の足を止めたのは、背後からかけられた聞き覚えのある声だった。




< 46 / 359 >

この作品をシェア

pagetop