紅き天
照日の不満は初めて聞いた。



相当苛立っているなと思うと、余計にこの手を振り切りたかった。



「放してよ!」


「嫌だよ!」



なんだか子供の喧嘩のようなやり取りを交わしながら、照日は静乃を引っ張った。



「止めてってば!
どうして私なの!?」


「知らないよ!
馬鹿殿に訊きな!」



とうとう痺れをきらせた照日はグイッと静乃を引き寄せ、肩に担いだ。



「降ろしなさい!」


「ああ五月蝿い!
眠り薬を用意しとくんだった。」



心底悔しそうに照日は吐き捨て、静乃の腹に肘を打ち込んだ。




















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