【短編】しろ犬のしっぽ ~幾多の時間(トキ)を経て~
第二章
私は、並木道に立っていた。


「ここは…」


確かに見覚えのある風景。


私の見慣れた風景


いつもよく通る、
私の家の近くの並木道。


そう


私は、
ここで白い子犬と出逢い…


「戻ってきたんだ…」


私は、
不思議な感覚に足取り運ばせながら、
家路へと帰る。


そして、
我が家に着き、

家の前から、
茫然と我が家を見上げた。


懐かしい気持ちにかられる…


「あら、悠。
何してるの?」


母が気付いて、
ベランダから私に声をかけた。


私は、
ただ茫然と見つめる。


「ん?どうしたの?
寒いから、早く入りなさい」


「あ…あぁ」


私は、
茫然と玄関を入る。


そして、
家に入り母を見ると、
私は、
元気良く言った。


「ただいま!お母さん!」


「んっびっくりしたーっ、
おかえり、
何、改まって」


「ううん」


「変な子だねぇ」


そう言って、
母は、首を傾げながら
洗濯物を畳んでいる。


いつもの風景に、
いつもの我が家が
そこにあった。


私は、
カレンダーを見る。


「あっ、もうすぐ悠の誕生日ねぇ。
何が欲しいか前もって言っておいてくれる?」

「あ、うん…わかったぁ」


― 御祝いしなきゃ ―


希毬の言葉を
思い出す…



「1968年…か…」


2月2日


日付は、
あの日と同じ



全く進んでいない日付に



夢か

…もしくは

幻だったか………



…一体あれは…


何だったのだろうか


と…



そして、


私は、



忘れゆく ―――…


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