【短編】しろ犬のしっぽ ~幾多の時間(トキ)を経て~

月日は流れ

…――…

月日は流れ…


――――…



私は、
大学を卒業し、
就職し、結婚し、
子どもは、
女の子と男の子の二人が生まれ、

三十年という月日が流れようとしていたある日


―――…

プルルルップルルルッ


「はい、もしもし」

『あ、悠?』

「うん」

『お祖父ちゃんがね、』

「うん」

『っゴホ、ゴホっ』

「ん?大丈夫?母さん」

『うん、大丈夫』

「で、お祖父ちゃんが、どうしたの?

……え?…」

…――


私は、急いで病院へと駆けつける。


病室に入ると、
祖母、母、親戚一同が、ベッドの周りに集まっていた。

「あ、悠」

「うん」

母に促され、
私は、
祖父に歩み寄る。


祖父は、
目を瞑り、
静かに横たわっていた。

「…お祖父ちゃん」

「たった、今よ」

母が、私に伝える。


「お祖父ちゃん…

お祖父ちゃん!」


私は、まだまだ話がしたくて、
笑顔が見たくて、

目を開けてほしくて、

何度も呼びかけた。



しかし…

祖父が
再び目を開けることは、なく…



「…お祖父ちゃんね、
悠のこと、気にかけてたわ。

見守ってくれるわ…」


― お祖父ちゃん… ―…
…大好きだよ…―





お祖父ちゃんは

天国へと旅立った ―…

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