パリ・ローマ幻想紀行
やがて、バスは、ローマ市内へと入る。私は、一応ビデオカメラを構えてみたが、窓から見える町並みはやはり暗かった。ローマ市内の大まかな地図は、頭に入れてはいたが、夜道であり地図の上と現地とでは隔たりがある。しかもバスは細い道を右へ左へと曲るので、どこをどう走っているのか見当がつかない。写真などで見慣れた円形競技場であるコロッセオだけは判断がついた。明々とした照明が一つもなく、逆U字形のゲートが三段に積み重なって円形状になっている。この円形状の黒い壁は、薄暗い夜の空気の中に迫ってきた。日本であれば強調するかのように照明されるに違いない。この黒い壁は、異様な霊感さえ感じさせる。ガイドさんの説明もなく、ローマで始めて対面したこの遺跡を無造作に後に追い遣る。やがてバスは、ホテルの前に到着した。初めて踏むローマの石畳である。

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