真夜中の太陽
最終章


――柚羽……。


君は覚えているかな?初めて会った日のこと。



『……こちら、沢井柚羽さん』



店長から君を紹介された時、僕は不思議な気持ちになった。


胸が苦しいような、懐かしいような、切ないような……。

言い表せない、いろんな感情が一気に押し寄せてきたんだ。

思えば、その一瞬で、僕は君を好きになっていた。




『……ちょっ……!』



きっと、覚えているよね?初めてキスした時のこと。

あの時、君はかんなのことばかり聞いてきた。


僕が好きなのは君だけなのに……。

かんなとのことが終わるまで、僕は君に思いを伝えることができなかったんだ。

先の見えない未来。

君への思いを口にしてしまったら、君はたぶん、僕を待ち続けていたかもしれない。

僕にはそんな無責任なことができなかったんだ。

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