真夜中の太陽
「……別に無理して話すことないんだよ?」
苦しかったけれど、それなりに幸せだったあの頃の思い出。
曖昧な態度ばかりだった、あの人。
あの人の大好きな場所・国道に来るたびに、あたしはいつもあの頃のことを最初から最後まで思い出している。
もう一度、あの人に会いたい――。
ただそれだけの思いで毎日のように訪れる、夜の国道。
一般の人には『けやき通り』の愛称で知れ渡っている、国道●号線。
あの人がかつていた世界の人たちは、そこを『国道』と呼ぶ。
国道は夜になると、若者たちの溜まり場と化して昼間とは違う顔を見せる。
「…晶くん、耳がダンボになっているよ?」
「えっ!?」
無理して話すことないよと言った彼は、あたしの突っ込みを真に受けて、咄嗟に両耳に手をあてがう。