魔法の指先
第一章 ─片想い─

日常

幼い頃からこの世界にいた。
それが当たり前だった。
眩しい光がいつも私を照らす。
つまらない。───
そう、思い始めたのはいつからだっただろうか。
15歳の夏。───
私の記憶が正しければ多分その頃。
私の人生が一転したのは。



パシャッパシャッパシャッ、と降り止むことのないシャッター音とフラッシュ。熱い視線が私に注がれる。

私の名前は秋山 心亜。15歳。現役の高校1年生。───5歳の頃からモデルの仕事をしていて、今じゃカリスマモデルなんて呼ばれたりする。カリスマ性なんて全くないのに。

「はい、OK!お疲れ~」

と、カメラマンの左海さんのそのかけ声で撮影は終了した。

「ありがとうございました!お疲れ様です」

私は深々と頭を下げる。そしてその場にいたスタッフ全員1人1人に挨拶を交わす。───私がこの業界に入ってまず教わったことがこれだ。どんなにトップにのし上がってもこれだけは忘れない。この人たちが働いてくれているおかげで今の私がいる。そう、思う。綺麗ごとだと言われるだけかもしれないけど。

「心亜ちゃん、お疲れ」
「左海さん!お疲れ様です」

私が挨拶する前に彼は挨拶してくれた。

彼の名前は左海 遼。25歳、独身。私の専属カメラマンだ。

おそらくこの業界で彼の名を知らぬ者は数少ないだろう。───若いながらも年に何回か個展を開き、マスコミや評論家に高く評価されている今大注目の写真家だ。勿論、その実力は業界人の耳にも届き、某有名女優やモデルが彼を指名して撮影を待ちわびているとかいないとか。

「今日はこれで終わり?」
「はい、これから学校です」
「そっか、心亜ちゃん高校生だもんね。普段こうしてると実感湧かないや」
「仕事の率が多いですからね。今日だって1ヶ月ぶりの学校ですよ」
「相変わらず忙しいみたいだね。人気商売だから仕方ないんだろうけど…」

そう言う彼の口調は私だけではなく、彼自身にも言っているかのように聞こえた。おそらく彼も多忙な日々を送っている、ということだろう。

「そうですね」
「その分、今日は沢山遊ぶといいよ。学生の特権」
「……はい、そう…ですね」


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