魔法の指先
この人は、どうしていつも私の心を暖めてくれるんだろう…。いつも私の欲しい言葉をこの胸に届けてくれる。

私が車から降りると中から手を振ってくれる義人さん。私も笑顔で振り返す。

ブォオオオ、という車が走り去る音。見えなくなるまで私はずっと立っていた。

この時誰が予測しただろうか?

こんなにも苦しくて、こんなにも愛しいこの気持ちを……。




自宅に帰って私服に着替えると私はすぐに左海さんに電話をかけた。もう9時を過ぎている。

《もしもし…》

気だるそうな左海さんの声が聞こえた。

『あ、左海さんですか?すみません電話、遅くなってしまって』
《いや…これから時間取れそう?》
『はい、私今からCloverに向かいます。左海さん、来れますか?』
《もちろん。じゃあ、すぐに向かうからまた後で》
『はい』

私は電話を切り、身だしなみを軽く整えた。そして家から歩いて10分ほどの所に位置するカフェバー、Cloverへと向かった。

左海さんは一体私に何の話があるのだろう、と胸に期待を寄せながら。


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