pp―the piano players―
酒井君と入れ替わるように、大きな花束を手にした女性が何人か入って来た。今までの演奏でも、演奏後にピアニストに花束やプレゼントを贈る人がいた。
それにしても立派な花束だ。きっと、素敵なピアノを弾く人がいるんだろう。ピアニストが出入りする、下手側の一番前の席に、彼女たちは陣取った。数席、そういう人たちのために席が空いている。
わたしは、あの時の先生の温もりを思い出していた。
先生はわたしにしょんぼりしたような笑顔を見せて、そう、と言った。
「圭太郎君がもっともっと、ピアノに集中できますように」
それからの先生は、わたしが少しずつ引越しの準備を進めていくのを黙って見ていてくれた。
年が明けて、圭太郎君の大学がひと足早く授業を始める。そんな平日の午後、加瀬さんにも手伝ってもらい、わたしは先生の家を出た。空は透けるように晴れていたけれど、風がとても冷たい日だった。
それにしても立派な花束だ。きっと、素敵なピアノを弾く人がいるんだろう。ピアニストが出入りする、下手側の一番前の席に、彼女たちは陣取った。数席、そういう人たちのために席が空いている。
わたしは、あの時の先生の温もりを思い出していた。
先生はわたしにしょんぼりしたような笑顔を見せて、そう、と言った。
「圭太郎君がもっともっと、ピアノに集中できますように」
それからの先生は、わたしが少しずつ引越しの準備を進めていくのを黙って見ていてくれた。
年が明けて、圭太郎君の大学がひと足早く授業を始める。そんな平日の午後、加瀬さんにも手伝ってもらい、わたしは先生の家を出た。空は透けるように晴れていたけれど、風がとても冷たい日だった。