pp―the piano players―
何と答えたものか。
迷っていると、早紀は身体を起こしてソファーに座り直した。
「さっき、加瀬さんが先生をお手伝いしたいって言っていたのを聞いて、わたし、嬉しかった。わたしは先生の力になんてなれないから。わたしは、圭太郎君もだけど、まだ子どもで、先生には迷惑しかかけられないから。大人の男の人が先生の力になってくれるなら、きっと、先生も安心すると思う」
初めて白峰美鈴の声を聞いた日を思い出す。あの覇気のない、魂の抜けたような声。初めて会ったときの、表情のない痩せこけた顔。自分を支え続けた父親を失い、師の元を去り、親類に疎まれ、あらゆることに無気力だった。
それが今はどうだ。穏やかな口調で強い意志を語り、美しく微笑む。この三ヶ月で、何が彼女を変えた?
「何より加瀬さんは、先生のピアノの調律師だから。先生はピアノを弾いているときが一番素敵なんです。とても綺麗な人だけど、ピアノを弾いているときの先生が一番きらきらしています。先生をそうやって輝かせているのは」
わかりきったことだ。
白峰美鈴を変えたのは。
「加瀬さんだと思うんです」
俺ではない。
吉岡圭太郎ではない。
この子だ。
迷っていると、早紀は身体を起こしてソファーに座り直した。
「さっき、加瀬さんが先生をお手伝いしたいって言っていたのを聞いて、わたし、嬉しかった。わたしは先生の力になんてなれないから。わたしは、圭太郎君もだけど、まだ子どもで、先生には迷惑しかかけられないから。大人の男の人が先生の力になってくれるなら、きっと、先生も安心すると思う」
初めて白峰美鈴の声を聞いた日を思い出す。あの覇気のない、魂の抜けたような声。初めて会ったときの、表情のない痩せこけた顔。自分を支え続けた父親を失い、師の元を去り、親類に疎まれ、あらゆることに無気力だった。
それが今はどうだ。穏やかな口調で強い意志を語り、美しく微笑む。この三ヶ月で、何が彼女を変えた?
「何より加瀬さんは、先生のピアノの調律師だから。先生はピアノを弾いているときが一番素敵なんです。とても綺麗な人だけど、ピアノを弾いているときの先生が一番きらきらしています。先生をそうやって輝かせているのは」
わかりきったことだ。
白峰美鈴を変えたのは。
「加瀬さんだと思うんです」
俺ではない。
吉岡圭太郎ではない。
この子だ。