pp―the piano players―
 賢い子だ。弱い子だ。自分の弱さをよくわかっている子だ。俺を見て隠れてしまったのは単なる人見知りではなく、ちょっとの刺激で割れてしまう水風船のように、気を張り詰めていたからだ。それが、この子もこんなに落ち着いて話せる。
「……君たちの先生は、君たちがここにいることがとても嬉しいんだと思うよ」

 うまく言葉がまとまらない。白峰美鈴と、梅野早紀、吉岡圭太郎の三人がこれからどうなっていくのか、心配だし、楽しみだ。その傍にいたら、支えられたらと思わずにいられない。

「だからもっと先生に甘えるといい。先生はきっと、君の力になることが嬉しい」
 誰だって、自分のできることで人のためになれたら嬉しい。俺にも経験があるし、増して、白峰美鈴は聴く人がいないからという理由でピアニストであることを放棄しようとした人間だ。
 
「俺は俺のできる方法で先生のためになりたいよ。俺は調律師だから、まずピアノのことで心配はさせない」
「……先生が好きだから?」
 照れながらも、目をそらさずに尋ねられる。真っ直ぐに答えなくてはならない。だから、ゆっくりと頷いた。
「そうだ」白峰美鈴が好きなんだ、と。

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