pp―the piano players―
 予約していたホテルに寄る。車を止め、三人で中に入る。ホテルのフロントに隣接するバーラウンジでは小さな人だかりが出来ていた。艶のあるピアノの演奏が漏れ聞こえる。まさかと言うか、やはりと言うか、その先にはドゥメールがいた。
「ピアノがあったら弾かずにはいられないのね」
 ニーナの呟きに頷く。

 ドゥメールがこちらに気づいた。眉を上げて微笑む。演奏を終えると、拍手の中をくぐり抜けこちらに来た。
「圭太郎は?」
「白峰美鈴の家にいました」
「そう。昔馴染みのピアノを弾くのも、ひとつ解決策としては有りよ。ここ、良いホテルね。チェックは終えたの?」
「まだです。行ってきます」
 ニーナがフロントへ向かう。
 彼女達のドイツ語の会話に、早紀が身を強ばらせている。苦笑しながら紹介する。

「早紀、こちらはSabina Doumerさん。フランス人のピアニストで、先生と共にライスターさんに師事していたんだ。今回、先生のお見舞いに来てくれたんだよ」
「あなたが早紀ね」
 ドゥメールは満面の笑みと、目には涙を浮かべて、がばっと早紀を抱きしめた。挨拶の域を超えている抱擁だ。
「ザビーナさん」
「あなたに会えて嬉しいわ」
 淀みない日本語。頷きながら、その腕に力を込める。
「コンラートから話を聞いて、いつかあなたに会いたいと思っていたのよ。ヨシの宝物に」
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