pp―the piano players―
ラジオ番組は、クラリネットが活躍することをテーマにした選曲で、曲の解説や、進行の二人のエピソードを話し、それから曲が流れている。クラリネット・ソナタ、クラリネット協奏曲⋯⋯。
「⋯⋯僕といるのは、楽しい?」
何を尋ねているんだ、僕は。
「楽しいよ」
早紀の答えは早い。
「誰かといるのが、楽しい、安心することなんだって、酒井君と知ったよ。酒井君が、たくさん、」
ふいに、早紀の右手が視界に入ってくる。ハンドルを握っている僕の左手に、早紀は右手を重ねた。
「たくさん、与えてくれたから、知ったの」
ごめん、危ないよね、と早紀は手を引いた。僕はハンドルから左手を離して、その手を追う。捕まえて、指を絡める。離したくない。
「早紀」
指に力が入る。何度、こうして絡めた指だろうか。昼となく、夜となく。季節も、場所も。早紀は握り返してくれたじゃないか。自分の心の天秤を釣り合わせるために、僕を選んできてくれたんじゃないか。
今、再び、選ばせる言葉を言おうとする僕は、わがままだろうか。
いや、圭太郎が困り果てて笑ったように、相当なお人好しか。
圭太郎が仕事相手だと分かった時点で、断れば良かったのだ。自分がわざわざ交点となって、早紀と圭太郎を繋ぐことなどなかったのに。
もっと早く、早紀にプロポーズの言葉を伝えて、彼女が心を麻痺させている間に答えを貰えば良かったのだ。その後だったら、いくらでも圭太郎と仕事をしたろうに。もう、早紀は僕のものなんだ、と揺るぎない証を持って。
あの時の早紀からの電話を、圭太郎から見えない、何の音も気配も伝わらないようなところで取れば良かったのだ。白峰美鈴の手術は無事に済んでいたのだから、圭太郎に伝えなくたって良かった。
後悔ばかりが溢れる。
それでも、再び僕は早紀に選ばせる。それが、僕の愛なのだろうから。早紀に、幸せでいてほしい。
「早紀、結婚しよう。家族になろう」
「⋯⋯僕といるのは、楽しい?」
何を尋ねているんだ、僕は。
「楽しいよ」
早紀の答えは早い。
「誰かといるのが、楽しい、安心することなんだって、酒井君と知ったよ。酒井君が、たくさん、」
ふいに、早紀の右手が視界に入ってくる。ハンドルを握っている僕の左手に、早紀は右手を重ねた。
「たくさん、与えてくれたから、知ったの」
ごめん、危ないよね、と早紀は手を引いた。僕はハンドルから左手を離して、その手を追う。捕まえて、指を絡める。離したくない。
「早紀」
指に力が入る。何度、こうして絡めた指だろうか。昼となく、夜となく。季節も、場所も。早紀は握り返してくれたじゃないか。自分の心の天秤を釣り合わせるために、僕を選んできてくれたんじゃないか。
今、再び、選ばせる言葉を言おうとする僕は、わがままだろうか。
いや、圭太郎が困り果てて笑ったように、相当なお人好しか。
圭太郎が仕事相手だと分かった時点で、断れば良かったのだ。自分がわざわざ交点となって、早紀と圭太郎を繋ぐことなどなかったのに。
もっと早く、早紀にプロポーズの言葉を伝えて、彼女が心を麻痺させている間に答えを貰えば良かったのだ。その後だったら、いくらでも圭太郎と仕事をしたろうに。もう、早紀は僕のものなんだ、と揺るぎない証を持って。
あの時の早紀からの電話を、圭太郎から見えない、何の音も気配も伝わらないようなところで取れば良かったのだ。白峰美鈴の手術は無事に済んでいたのだから、圭太郎に伝えなくたって良かった。
後悔ばかりが溢れる。
それでも、再び僕は早紀に選ばせる。それが、僕の愛なのだろうから。早紀に、幸せでいてほしい。
「早紀、結婚しよう。家族になろう」