pp―the piano players―
 先生のお父さんの妹、あの人のことについてわたしはまだ理解できていなかった。先生に会ったらどんな顔をすれば良いのかわからなかった。
「もう少し考えたいんです。落ち着いて、一人で」
「そうか」

 加瀬さんはそれとなく上の階を見上げた。圭太郎君が弾いているのは、ショパンの黒鍵のエチュード。途切れない音符は、部屋から溢れて降って来る。ずっとその雨に打たれていたいけれど、わたしは玄関のドアノブを握る。

「バス停まで送って行こうか。それか圭太郎を呼ぶか」
「大丈夫ですよ」

 加瀬さんに見送られて、先生の家を後にする。わたしの心は、来る前より少し軽くて、来る前より少し重くなっていた。
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