pp―the piano players―
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メールの返信が電話で来た。酒井君の声は弾んでいる。
「白峰美鈴があの先生なの!?」
「うん」
「一時期、ヨーロッパのピアノ賞を総舐めにしたっていう?」
「……うん」
うわー、とか、あー、とか、そんな声が電話の向こうから聞こえる。
「白峰美鈴って、十年ぐらい前にCDアルバムを三つ出したんだよ」
知っている。加瀬さんが何度も聴かせてくれた。
一つは、ベートーベンのソナタ集。先生のお気に入りのソナタやソナチネが詰まっている。一つは、有名なクラシック集。小中学生、高校生がピアノを習う中で触れるような有名なクラシックが、先生の手で華麗に奏でられている。そしてあと一つが、同じ曲を色々なピアノで弾く、いわば利きピアノという企画CDだ。
「両親が好きで集めてたんだけど、僕も、特に二枚目はずっと聴いて育ってさ」
酒井君の口から、ふふっと笑いが溢れた。
「写真は見たことなかったんだ。どこにも載ってないし。今回のイベントに来るって聞いて、初めて姿が見られると思って誘ったんだけど」