pp―the piano players―

 酒井君は手早く荷物をまとめ、さっきまで愛美が座っていた席に着いた。
「ごめん、友達を追い払ったみたいで」
「愛美が呼び出されているのは本当だよ、履修組むのに何かミスがあったみたい」

 ――お茶して、大学の話をして。
 今日はまだ、その日じゃないのに。

「あのね」「あのさ」

 声が重なってしまった。酒井君が柔らかく笑う。
「どうぞ」
「良いよ、酒井君から」

 酒井君はバッグから手帳を取り出し、そこに挟んであった白い封筒をわたしに渡した。
「届いたんだ、白峰美鈴のチケット」
 わたしはイベントのロゴが入ったその封筒を受け取り、ゆっくり開く。

「僕、本当に楽しみなんだ」
 先生のコンサートのチケットには、レース模様の透かしが入っている。
「その演奏が聴けることも、早紀とデートが出来ることも」

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