pp―the piano players―
「先生の演奏が聴けるのは、本当に楽しみ」
 チケットを明かりに透かす。あ、この模様、先生の家のテーブルクロスと同なじだ。

 先生。

 わたしはチケットを封筒に仕舞った。酒井君はそれをまた、手帳に挟む。
「明後日、会場でまた渡すからね」
 頷いて、そのまま酒井君を見る。
「酒井君、ずっと仲違いしていた人と和解する時ってどんな時?」

「それは、」
 酒井君の眉毛が下がる。
「僕と吉岡圭太郎のこと?」
 違う。わたしは必死で首を横に振る。
「早紀と誰かのこと?」
 それには、一度だけ振る。

 酒井君はコーヒーを飲み干して、テーブルの脇へ退けた。
「僕だったら、もうどうでも良くなったら和解するな。ちょっと違うかな、仲違いを続けるのが面倒になる」
「自分や、自分の周りのものを酷く否定されたとしても?」

 わたしは、酒井君に何を言っているんだろう。酒井君は関係ないのに。
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