時計塔の鬼
「あとは、あれだな、あれ。意識を薄くすると、深く眠れることと、飲まず食わずでも平気なこと」
「えっと……それって、冬眠みたいなもの?」
「うん、似た感じだな」
シュウはあっさりとした様子だったのを一転させて、何かを思い返すかのように、再び街並みへと視線を投げた。
シュウに倣った私の視界では、今にもここからは遥か遠くに見える山へと太陽が沈もうとしていた。
西日が最後の足掻きとでもいうように、今日一番の輝きを放つ。
頬に当たる風は、さすが十二月だと言えるほどに、冷たい。
「俺にできるのなんて、それくらいだ」
零れ落とされた言葉たちが、宙を舞って西へ西へと飛んで行ってしまう気がした。