時計塔の鬼


何もないはずの宙を叩くと確かに何かの音がした。

握り締められ、叩き付けた拳が、痛い。



そこには不可視の壁があった。

地面の下から天空まで、垂直に塔と周りとを隔てている。

囚われ者たちは出ることができない。

決して、越えることが叶わない、透明の壁。



腹から息を吐き出した。


――ドンンッ…


もう一度叩いても、不可視の壁はびくともしない。



「俺が、ここから出れたら!」


――ドンッッッ…




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