時計塔の鬼


『どうしようどうしようどうしようドウシヨウ……』




彼女は壊れたテープレコーダーのように……。

震え、ただただ何かを恐れ、何かに怯える。

近付き、抱き締めようと腕を伸ばす。

だが、抱き締めようとした腕は空を切り、また、行き場をなくした。



夕枝が、目の前から消えた。






『鬼さん……シュウ!』



名を呼ばれ、振り向くと、そこには消えたはずのさくらが居た。

惚けている俺の手を奪い、時計塔の手すりへ……校門が見える場所へと導く。

そこには、さっきまで俺の傍にいた、大事な女の姿があった。



「! っ……夕枝っ!!」



俺の叫びが耳に届いたのか、夕枝はゆっくりと振り向き、俺を見て笑った。

そこには、先ほどまでの恐怖や怯えは微塵も見出だせない。

だが妖艶に笑むその顔は、俺を驚愕させるには十分すぎた。



『このまま、あの子が校門から出たら……』



ここで一旦さくらは言葉を切り、俺を見た。

その瞳は語っている。

“どうなると思う?”と。


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