時計塔の鬼
「ゆえ……っ!」
目を開け、飛び起きた。
肩で荒い息をし、視界が揺れる。
夕枝の腕を掴もうと思って伸ばした手が空を切り、それはそのまま握り拳となった。
寝汗でもかいたのか、背中がぐっしょりと湿っていて、ひどく気持ち悪い。
夢だ。
今のは夢なんだ。
「そうだ。夢だ。……現実じゃない」
そう、必死に自分に言い聞かせる。
だが、胸の奥に残るしこりはぬぐえない。
嫌な、予感がする。
この夢を見る度、その不安は止まる所を知らず、ガタガタとその車体を揺らして俺の体を走り抜ける。
俺は怖いんだ。
夕枝を失うことが。
俺があの夢を初めて見たのは六年前の春。
確か、夕枝の大学の入学式の前夜だった。
その明け方にアノ夢を見て、目覚めると周りが紅くないことを知り、現実ではないことに、俺はひどく安堵していた。