時計塔の鬼
アノ夢を見た後は、情けないことに、いつまでも呼吸は荒く、いつまでも体は芯から震え、止めどない恐怖が俺を襲った。
そして、目覚めた時に、ホッとするんだ。
現実じゃない。
本当じゃない。
虚構だ。
空想だ。
夢だ、と。
二度目はその半年後。
ちょうど、俺が夢なんて忘れていた頃で、夢だと気付いた瞬間、心臓が恐怖に凍り付いたのを覚えてる。
その次は、そのまた半年後。
その夢は、ちょうど俺が忘れた頃にやってくるんだ。
“忘レルナ”
あの言葉が耳にこびりついて離れない。
俺の耳から、俺を蝕んでいくんだ。
だがある日、それに変化が起きた。
……それはちょうど、夕枝がこの高校に赴任した日の夜。
その夜から、俺はいつでも意識の中に据えて置かなきゃならなくなった。
変わったからだった。
その次の夜。
俺を迎えたのは、またアノ夢だった。
ただ、いつもと違うことに俺は気づいてしまった。
夕枝の表情や動作、雰囲気、全てがより鮮明になりだしたんだ。