時計塔の鬼
「でもさ、歩美の場合、ノロケになるんじゃない?」
話し始めて、早一時間。
ここまでは、ほぼ歩美の独壇場。
もとい、ノロケ話。
今、ベッドサイドのぼんやりとした明かりだけが、光源となっていて、ほのかに薄暗いせいで、睡魔にたびたび襲われそうになった。
その度に、歩美の声でハッとしているのだけれど。
「ねぇ、夕枝は? そういえば、夕枝から甘い話って聞いたことないわよね?」
――ギクッ…
背筋をツーッっと滑ったのは、多分冷や汗だ。
「え、そ、そうだった?」
「そう……そうよ、間違いないわ、多分」
その言葉に矛盾が含まれていることに、当の歩美自身は気付かない。
多分、酔ってる。
そっと歩美に視線を合わさないように、ベッッドサイドテーブルに置かれた二つのグラスと、一本のワインを盗み見た。
そんなにキツくはないお酒だけれど、強くはない歩美が飲めば、すぐに酔っ払ってしまうほどだ。