キミノタメノアイノウタ
「一緒にするなよ」
「一緒にするわよ」
私はへそを曲げた灯吾の様子に満足し、砂利道の先にあるタツの家を眺めた。
我が家と大して変わらない木造平屋建ての住宅、そこがタツの家だった。
昔から通いなれた道を灯吾と2人で歩いていることに違和感を感じつつ、私は空を見上げてボケッと突っ立っていた奴の首根っこを掴んでそのまま引きずった。
「なにすんだよ!!」
「あのねえ、よそ見するのはいいけど足だけは動かしてよ!!」
歩いて5分のはずの道のりがさっきから一向に進まない原因が、歩いてはすぐに立ち止まってしまう灯吾にあるのは明らかだった。
「少しぐらいいいだろ?」
「ボーっとして熱中症になりたいならどうぞ?」
そう告げると灯吾はいかにも嫌そうに顔を歪めて、今度こそ大人しく私の隣に並んだ。
「お前、可愛げがないな」
「うるさい」
そんな軽口を叩きながら、私達はタツの家へと向かったのだった。