heaven
キラの口からこぼれた言葉は恐ろしいものだった。

「天使狩りというものが流行っているそうだ」

「天使……狩り?」

コーヒーの湯気が揺れた。
キラの青い瞳が虚ろ気に揺れる。

「そう。なんでも、
僕たちの羽根や目というのは、高価な 珍品 として取引されているらしい」
「そんな……狂ってる!」
がたん、とカップが音をたてた。
驚いた店員がこちらを振り返る。

「あ、すみません……」

「賊には十分気をつけるんだよ?」

キラは真剣な瞳でリフに念を押した。

「大丈夫、俺そんなに弱くないっす」

にっこりと笑った瞬間

外で割れるような悲鳴が聞こえた。

女の悲鳴

何かが割れる音
轟音
叫び
泣き声

「なんだ!?」

「おばあさん、お代、ここに置いておきます!
  ……リフ、様子を見に行こう」

ばたばたとせわしなく店を出ると
通りの向こう、騒ぎは公園の隅で起こっているようだった。

「例の、か?」

キラは純白の翼を広げ、
悲鳴のしたほうへと向かう。
リフは不安で張り裂けそうな胸を押さえながら同じく翼を広げた。

目にしたものは、あまりに悲惨すぎて

目を疑うしか、なくて

痛くて

苦しくて 辛くて

「……嘘……だろ?」

リフが見つめた先には

女が転がっていた。

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