ノクタ-ン ♪ プリ-ズ・Love
結城の船は、海面に突き出している岩を避けることが出来たし、
風の神が荒れ狂い、波を荒立てても、波の来る方角を知ることができたから-
結城の船は、波が去っている間に通り抜けることが出来た。
そのうち、いつの間にか静かな波間に船は浮かんでいたのだが…
小絵の弾くピアノの音と歌声が、だんだん遠くなって消えていた。
そして、取り残されたように静かな海の上にいる結城は、やがて眠りについていた。
あの日から、どれくらいの時間がたったのだろうか…
そう…結城が事故に会った日から…
いつ目覚めるかもしれない結城の病室の前には、
母の早苗が、静かに長椅子に座っていた。
ドクターは、今夜が峠だと言い放ったが、あの日から十日も過ぎている。
その早苗の身体を気遣って、早苗の弟の健次がそっと近寄って言った。
-姉さん、僕が交替しよう。少しは眠らないと身体に毒だよ〃
姉さんが、倒れたらどうするんだ。圭介が悲しむことになるんだよ-
「ありがとう、でもこのままでいるわ。心配でしかたがないのよ!」
-やっぱりそうだよね。
母親だからね、しかたがないよね。
じゃあ、僕は向こうの椅子に座っているからね。
辛くなったら、いつでも交替するからね-
「ありがとう、
心丈夫だわ。
あんたがいてくれるから」
-大丈夫だよ。
きっと、圭介は気がつくよ〃-
「そうだといいのだけれどね…
圭介が、時々うわ言で言ってる名前なんだけど…
いったい誰のことかしらねえ…あんた、何か心当たりない〃」
一瞬ぎくっと、胸をつかれた弟の健次は、ためらいながらこう言った。