【完】キス、kiss…キス!



夕ご飯を食べる時も、私達に会話なんてなくて。


折角ナオちゃんが作った冷し中華も、美味くないわけがないのに味がしない。


この空間には、蝉が忙しそうに鳴いている音と波の音、それからぶつかる食器の音くらいしか流れてない。


こんな風になる為に旅行しにきたわけじゃないのに。


結局無言のまま食事が終わり、私は皿を洗って溜め息を漏らす。


ナオちゃんとこんなふうになっちゃうのは初めて。あんな風に不安をぶちまけられるのも、初めてだった。だからどうしていいのか分からないんだ。


「ねぇ姫さん……今、いい?」


皿を洗い終わり手を拭いていると、何時間かぶりに聞いたナオちゃんの声。


心臓をぎゅうっと掴んできゅうんとさせる、私の大好きな低い声。
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