【完】キス、kiss…キス!
こんなこと言われたら我慢なんて出来ない。私は本日二度目の涙を瞳からボロボロと落として、止める気にもならなかった。


「ゴメン……言っちゃいけないこと、言った。思ってても言っちゃいけないこと。サイテーだ」


ナオちゃんは、私の涙を見てさっき以上に傷ついた顔をして、綺麗なぷるぷるの唇を噛み締める。


お願いだから、そんな顔しないでよ……。


「……戻ろう、か」


小さく呟いたナオちゃんは、私の腫れた足首を私を確認すると、何も言わずおんぶして立ち上がった。


私の脳裏には、あの悲しい顔をしたナオちゃんが焼き付いて消えない。


お互い、私も、多分もやもや色々考えて、会話をすることなく、あの小さな別荘に戻った。


こんなことになっても気遣っておんぶしてくれるナオちゃんの温もりを感じながら、私は色んな感情が混濁した涙を止めることが出来なかった。
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