シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
5
 家のブザーが鳴った誰かが来たようだ。


 ルシアはその音で目を覚ました。よく見ると毛布がかかっていた。どうやらその場で眠ってしまい、館長に世話になってしまったようだ。


 ルシアは眠る前のことを思い出していた。この家に着いてから美味しい御馳走をごちそうになり、シャワーも浴びてその後はお互いに女の子同士の会話に花を咲かせて眠ってしまったようだ。


 足音がこっちに向かってくる。館長だろう。お礼を言わなくては。そう思ってその場に立つ。


 ドアが開くと館長の後ろにもう一人男が立っていた。その男とはルシアはよく知っていた。今までずっと旅をしてきたシェイクだ。


「やっぱりここか」


 シェイクが半分呆れた風に話す。その表情を見て館長は何んとなく事情が呑み込めたらしい。館長は二人に座るように勧め、自分は飲み物を二人の前に出す。テーブルを挟んで二人は座っているがどちらもだんまりだ。それを見かねた館長がシェイクに話かける。


「ここの住所が分かったってことは、お父様の所に行かれたのですね?」


「ああ。多分それもルシアの計画通りだろう。とりあえずなんとしても両親に合わせようとしての行動だ」


「そうだったのですか。でも良かったです。ルシアちゃんがもう少し遅かったら私も帰ってましたから」


 館長はそう言って、シェイクの今までの経緯を説明した。自分が退館寸前に来たこと。その理由も説明した。


「そうか。ありがとう。見ず知らずのこいつを助けてくれて」


「いいのよ。あなたの大切なパートナーなんでしょう?だったら助けてあげないと」


「悪かった。ルシア、お前もちゃんと礼を言うんだ」


「あ、ありがとうございます」


 館長は手を振って、いいのよ。と恥ずかしそうに答え、一度部屋を出た。どうやらそこから先は二人で完結しろということらしい。


 彼女が退室すると部屋は水を打ったように静まり返る。テーブルを挟んだという微妙な距離が二人の心理状態を表わしているようだった。
< 26 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop