私はあたりをうかがった。集中する。

音は聞こえない。静かだ。かすかなざわめきに近い音が、するような気もする。しかし、手掛かりになりそうな音はなかった。

私は壁を叩いてみた。ごん。普通の壁だ。硬いし、壁程度にはやわらかい。特に薄いとも厚いともわからない。蹴ってみた。どん。振動が部屋を走る。が、何も状況は変わらない。暴れてみるか?いや、面倒だ。疲れることはしたくない。やるとしても、後に回そう。

嗅覚を意識してみたが、部屋の匂い。あの何もない部屋、不動産屋に連れられて、初めて入るアパートのような匂い。それ以外は何もない。

やれやれ。私は寝転んだ。床が、硬い。
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