電話の相手が変わる。

「父さんだ。今どこにいる?落ち着いて、話しなさい」

「白い部屋にいる。出られない。どこかはわからない」

「…犯人は近くにいるのか?」

「誰もいない」

そうだ。まだ誰も見ていない。何となく、この状況は誘拐ではない気もする。誘拐なら、犯人は私の携帯電話を没収すると思うのだ。

「とにかく、警察に連絡する。その場所の手掛かりになるようなものは、ないか?」

「ないと思う。でももう一度、探してみる」

「一旦切る。何かあったらすぐ連絡しろ」

電話は、切れた。
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