「あ、母さん?私」

「あら!あなた、今どこにいるの?朝ご飯も食べずに学校行ったの?お弁当忘れてるわよ。届けて…」

私は母の話を遮る。

「いや。今起きたら、変なとこにいるんだけど」

「変なとこ?」

「白い密室に裸でいるの」

電話ごしに、母が息を飲むのがわかる。足音。母は二階の、私の部屋に入ったようだ。バサバサと騒がしい音。私が部屋にいないのを確認したらしい。

「母さん、私の部屋どうなってる?」

「どうって…綺麗よ。パジャマがすっぽり、布団の中に脱いである…。あなた今どこにいるの?誘拐なの?と、父さん!大変!父さん!」

言われて初めて、誘拐という可能性に気付いた。私は変質者に誘拐されたのか?この出口のない部屋、どこかから変質者が現れ、私は強姦されるのか。または身代金目的か。もしくは殺されるのか。

まあ今の所判断は出来ない。存在の有無も分からぬ変質者を、怖がっても仕方ない。私はのんびりした性格なのだ。電話先の騒動とは裏腹に、私は落ち着いていた。
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