それは、印象であった。自分が大きくなったような気分。白ばかりの部屋で、錯覚を生じたのか。

ふと壁際に寄る。私は壁に、部屋の隅、立方体の点に当たる部分から一センチほど離れた位置に、爪で傷をつけてみた。印である。この試みに意味があるかないか、現時点ではわからない。

白ばかりで比較対象のない部屋に、印。何か手掛かりになるかもしれない。

もちろん何の意味もない可能性もある。まあいい。さて、他にやることが思いつかない。私は携帯を開き、アプリで遊ぶことにした。
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