ウソ★スキ
「美夕、放課後どこか行かない?」

「え?」

「外だったら、少しは気が楽だろ?」

「──うん」

「どこか行きたいところ、ある?」


……ソラと一緒だったら、どこだっていいのに。

だけどそんなことは言えなくて、あたしはソラの胸に顔を埋めたまま答えた。


「じゃあ……バスに乗って、また終点まで行く?」

「……え?」

あたしの答えが意外だったみたいで、ちょっと戸惑ったソラだけど、

「また……行っちゃうか?」

楽しそうなソラの笑い声が、あたしの耳をくすぐる。

「うん!」


あたしは顔を上げることが出来なかった。

なんだか、嬉しくて。
なんだか、ドキドキして。
恥ずかしくて……。



そのときあたしは、幸せだと思った。

あんなに悩んで、ソラを思い続けることは無理だとさえ思ったのに、

ソラの言葉は魔法のようにそんなあたしの不安を拭い去ってくれて。



──本当は、まだ何も解決していないんだけど。

だけど、キラに分かってもらえる日まで、頑張れそうな気がした。




あたしは、本当に、幸せだった。

ソラの胸の中に、小さな希望を見つけたみたいで。




だけどあたしは、知らなかっただけなんだ。


この幸せが、実は香水の香りよりももろく、

数時間後には消え去ってしまうということを──


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