その日、僕は神になった
 ごめんな玲花、親父にお袋。これから地球は前代未聞の恐怖に包まれることとなる。人々はその中で誰一人として助かることなく死んでいく。我こそは、自分だけは助かろうと争い、奪い合い、殺し合う。警察も軍も国も機能を失い、そこは正に生き地獄と化す。そしてその恐怖と絶望の中で、もがき苦しみながら死んで行くのだ…。
 なぁ親父、お袋、玲花、その最後の時に俺のことを思い出してくれるか?そして俺のことを誇りに思ってくれるか?俺は何も守ることが出来なかった。だがせめて、彼らには伝えたい。俺が人類を、みんなを救おうと一人戦ったことを。何の取り柄もなく、何一つ誇ることの出来なかった、あなたたちの一人息子の奮闘ぶりを、自らを守るために命を落とした憐れな同級生の奮戦ぶりを。
 褒められたい訳でも、感謝されたい訳でもない。ただ彼らがそれを知れば、少しは報われるのではないだろうか?少しは未練なく旅立てるのではないだろうか?その背中に背負った、重い十字架を下ろし…。
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