W・ブラッティⅡ
大学卒業後は佐竹が本格的に蜃気楼奇術団を立ち上げ、精力的に公演を行って今では日本全国でマジックを行えるようになりつつある。それは佐竹たちの不断の努力が実をつけ花をつけた結果である。


「ここまで来るのに、長かったような短かったような。でも毎日が充実していたよな」


 渡部の声がゆっくりと聞こえた。佐竹以下全員が頷く。渡部が続けて、


「確か、最初のマジックはデパートの屋上だっけか。客がほとんどいなかったし、それに俺達のマジックに無反応でよ。あれには俺は腹が立ったな」


 大嶺も乗ってきて、


「そうそう。まず見たことのないような斬新なマジックを見せても誰も何とも言わないからよ、一場が終わった後すごい剣幕で観客を見ていたよな。あれにはビビった」


「おいおい。大嶺、いつまでその話を続ける気だよ……。あの話は二度としないって約束しただろう?」


「気にすんなっての。ここには俺たち以外誰もいないからよ。でもよくあそこでキレなかったよな。俺結構感心したぜ」


 大嶺の言葉に一場が少し照れる。昔話に花を咲かせるメンバー。最後に佐竹が、


「三日後の公演、これが俺達の最初の大仕事だ。みんなしっかり頑張っていこう!」


 五人が輪になって円陣を組んだ。佐竹が続けて、


「精一杯頑張ろう!」


「オー!」
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