薔薇姫-another story-
マレッタ様は瞳を細めたかと思うと、ゆっくりと私に視線を移した。
「…けれど、わたくしの想いが…ロゼリナータ様を苦しめてしまうのなら」
マレッタ様は、わたしが知っている限りの…いつもの口調で言った。
「忘れて下さって構いませんわ」
時が、止まったかと思った。
小鳥の囀りが遠くから聞こえなければ、時が止まってしまったのだと、本気でそう思っただろう。
その時、その空間にあったもの全ての呼吸が、止まってしまったかのように思えた。
何故そう思ったのかは…わからない。
「…マ、レッタ…様?」
いつの間にか乾ききっていた唇を動かし、私はマレッタ様の名を呼んだ。
「わたくしの想いを、忘れて下さって構いませんわ」
同じ言葉を、マレッタ様は再度口にする。
…今にも、泣いてしまいそうなくせに。
無理やりな笑顔をつくって。
そんなマレッタ様の表情が、私を苛つかせた。