薔薇姫-another story-
「…何故です?」
「え?」
ぶっきらぼうに、私はそう訊ねた。
「何故いきなり、そのようなことを仰るんです?」
マレッタ様の表情が強張り、視線が泳いだ。
暫くの沈黙の後、マレッタ様は覚悟を決めたかのように、真っ直ぐに私を見据えた。
「わたくし…」
ごくり、と喉が鳴る。
「わたくし、婚約しますの」
その唇から紡がれた言葉を理解するのに、私は時間がかかった。
理解してすぐに出た言葉は、
「………え?」
という、何とも間抜けな返事だった。
婚…約。
「相手は、貴族の殿方で、以前からよくしてもらっていた方ですわ」
訊いてもいないのに、マレッタ様は詳細を口にする。
耳を塞ぎたくなるような衝動を抑え、私は訊ねた。
「マレッタ様は…その方のことが、好きなのですか?」