薔薇姫-another story-
マレッタ様は一瞬、驚きの表情を浮かべたかと思うと、すぐに首を振った。
縦ではなく―――横に。
「わたくしの心は、ロゼリナータ様以外の方には向きませんわ」
「なら、何故っ…」
静かに微笑むマレッタ様を見て、私は口をつぐんだ。
それ以上何も訊かないで、と訴えられているような気がした。
「ロゼリナータ様の心を乱す資格は、わたくしにはありませんの」
カタンと小さく音を立て、マレッタ様は立ち上がる。
「わたくしのことは、忘れて下さい」
マレッタ様は最後に、精一杯の笑顔を浮かべた。
「大好きでした」
去っていくその後ろ姿に、かける言葉が見つからない。
追いかける理由も、ない。
私はただ、その場から動けなかった。
涙で濡れた笑顔が、頭に焼き付いて離れなかった―――…