図書館で会いましょう
『♪♪♪…』
由美の携帯が鳴る。誠司かと思って見た着信は真理子からだった。
『何だろ…?』
由美が電話に出ると真理子の声は涙声だった。それから刹那の内に由美は店を飛び出していた。
店から出てすぐタクシーを拾う。車が30分ほど行った先は総合病院だった。由美は車から飛び出し救急病棟の入り口に駆け込む。病院の薄暗い廊下を駆ける。由美の足音が雨に濡れているせいもあって不気味に響いていた。
ある病室の前のイスに二人の男女が座っていた。浩平と真理子だった。真理子は浩平の肩に顔をうずめて泣いている。浩平は真理子の頭を抱きしめ、片方の手は強く握りしめていた。由美の足音に浩平が気付く。浩平は黙って由美を見つめていた。真理子は少し顔を上げ由美を見る。真理子は涙で顔がくしゃくしゃになっていた。
「せ、誠司は…?」
息を切らしながら絞り出すように言葉を出す。その言葉を聞いて真理子はまた浩平の肩で泣いた。浩平は真理子の様子を気にしながらも黙って目の前にある病室を指差した。由美は見えない糸で操られるように病室は一歩、また一歩と足を進める。
病室に入るとベッドが一つある。その周りには白衣を着た男性と女性、そして中年の男女がいた。誠司の両親だった。白衣を着た男女、医師と看護士が由美をちらっと見る。誠司の両親に少し頭を下げ由美の横を通り部屋から出ていった。由美は入り口の所で立ち止まっていたが、医師とすれ違うと同時に一歩進んだ。ベッドには誰かが寝ている。誠司の父親は唇を噛みしめ、黙ってベッドの上の人物を見つめていた。一方、誠司の母親はパイプイスに座り泣いている。母親が顔を上げ由美を見る。
「由美さん…」
由美には母親の声が聞こえていない。由美はパンドラの箱を開けるような気持ちだった。一歩足を前に進める。今までで感じたことのない重さだ。そしてやっとベッドの上の人物の顔を見る所まで進んだ。
由美の携帯が鳴る。誠司かと思って見た着信は真理子からだった。
『何だろ…?』
由美が電話に出ると真理子の声は涙声だった。それから刹那の内に由美は店を飛び出していた。
店から出てすぐタクシーを拾う。車が30分ほど行った先は総合病院だった。由美は車から飛び出し救急病棟の入り口に駆け込む。病院の薄暗い廊下を駆ける。由美の足音が雨に濡れているせいもあって不気味に響いていた。
ある病室の前のイスに二人の男女が座っていた。浩平と真理子だった。真理子は浩平の肩に顔をうずめて泣いている。浩平は真理子の頭を抱きしめ、片方の手は強く握りしめていた。由美の足音に浩平が気付く。浩平は黙って由美を見つめていた。真理子は少し顔を上げ由美を見る。真理子は涙で顔がくしゃくしゃになっていた。
「せ、誠司は…?」
息を切らしながら絞り出すように言葉を出す。その言葉を聞いて真理子はまた浩平の肩で泣いた。浩平は真理子の様子を気にしながらも黙って目の前にある病室を指差した。由美は見えない糸で操られるように病室は一歩、また一歩と足を進める。
病室に入るとベッドが一つある。その周りには白衣を着た男性と女性、そして中年の男女がいた。誠司の両親だった。白衣を着た男女、医師と看護士が由美をちらっと見る。誠司の両親に少し頭を下げ由美の横を通り部屋から出ていった。由美は入り口の所で立ち止まっていたが、医師とすれ違うと同時に一歩進んだ。ベッドには誰かが寝ている。誠司の父親は唇を噛みしめ、黙ってベッドの上の人物を見つめていた。一方、誠司の母親はパイプイスに座り泣いている。母親が顔を上げ由美を見る。
「由美さん…」
由美には母親の声が聞こえていない。由美はパンドラの箱を開けるような気持ちだった。一歩足を前に進める。今までで感じたことのない重さだ。そしてやっとベッドの上の人物の顔を見る所まで進んだ。