図書館で会いましょう
誠司は由美の反応が不思議だったが、彼女の視線を見てその理由がわかった。
「あぁ…これ?」
誠司の言葉に由美は小さくうなずいた。
「この講義、必修だから受けてるけどつまらないでしょ。暇だからつい…なかなか良い出来だと思うんだけど。」
由美と誠司の出会いはそれからだった。その後、帰り道も方向が同じだということもあり二人の距離はだんだんと近づいていった。
やがて真理子と真理子の彼氏山本浩平とも親しくなり、四人で遊ぶようになった。そして由美は明るく真面目だけど少し抜けている誠司に想いを寄せることになる。
「ねぇ真理子…」
「何?」
大学三年の冬のことだった。二人は大学の近くの喫茶店でお茶をしている時、ふいに由美は思いふけった表情で真理子に問いかけた。
「誠司ってさ…私のこと、どう思っているのかな?」
それは真理子も気にしていることだった。二人が知り合ってからもう一年半が経つ。真理子は由美の気持ちは既に知っていたが誠司はそれに何も反応がなかった。本人には聞いていないがおそらく誠司も由美に対して同じ感情を持っているように見える。それでも何も由美に対して行動しない誠司に真理子もやきもきしていた。
「誠司くんも…由美のことが好きなんだと思うんだけどねぇ…」
真理子はコーヒーカップの取っ手を指でなぞりながら言う。考え事をする時の癖だった。
「そうなのかなぁ…」
「そうだよ。」
由美は人目を気にせずに顎をテーブルの上に乗せていた。由美が考え事する時の癖だった。真理子は由美のこのしぐさがたまらなく好きだ。まるでペットのように頭を撫でた。
「最近、自信なくってさ…」
「自信?」
由美は元の姿勢に戻っている。
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