図書館で会いましょう
「そう…わかったわ…」
少し言葉を溜める。一息つき、
「『由美、俺にはもうできないけど…俺の分まで幸せになれ!』、それが最後の言葉。」
由美には目の前で誠司が言っているように聞こえた。その瞬間、由美の目から大粒の涙がこぼれた。
「誠司…」
由美は手で顔を覆った。息もできないぐらい涙が止まらない。そんな由美を見て、誠司の母親は由美の肩に手を置いた。
「由美さん…」
由美は答えることができない。
「由美さん…あなたは本当に優しい人。だからいつまでも過去に捕われてはダメよ。」
由美は顔を上げ、母親を見つめる。
「でも…」
次の言葉が出てこない。それでも何を言おうとしているかは母親に伝わっていた。
「誠司をそこまで想ってくれてありがとう。でもね、誠司はあなたが泣いているのを望んでなんかいないの。残された人間は前に進まなきゃダメなのよ。」
涙が止まらない。それでも由美はゆっくり頷いた。
「ありがとう。誠司はあなたという人間と出会えたことで、短かったかもしれないけど本当に幸せだったんだと思う。もうここに来るのはやめて、あなたはあなたの幸せを掴んで。」
由美は再び誠司を見つめる。
「ありがとう…」
< 56 / 59 >

この作品をシェア

pagetop