図書館で会いましょう
「由美のことが好きだ!」
それは周りに聞こえるぐらい大きな声だった。由美は一瞬呼吸が止まる。
「えっ…?」
由美は今の状況が理解できていなかった。誠司はもう一度深呼吸をして、
「俺、由美のことを初めて見た時からずっと好きだ。俺と付き合ってくれ!」
そう言って深いお辞儀をした。由美は頭が真っ白になっていた。それが今の状況を客観的に見させていた。
『誠司らしいなぁ…』
今の誠司の姿がとても愛しく思えた。少しして誠司は頭を少し上げ、由美を見た。
「えっ…」
由美は笑顔だった。そしてその目からは頬を伝う涙が流れていた。
「ゆ、由美…?」
誠司の言葉で由美は自分の涙に気付いた。
「あ、あれ?あれ?ど、どうしたんだろ、私?」
由美は自分の涙に驚いていた。
「ごめんね。驚かしたよね?」
由美は急いで指で涙を拭った。誠司は体制を元に戻している。
「…ありがとう。」
誠司は真っ直ぐに立って由美の言葉を黙って聞いていた。
「私も…誠司のこと、ずっと好きだったよ。誠司のことずっと見てたよ。私も誠司が大好きだよ。」
由美は笑顔で誠司の胸に飛び込んだ。誠司は優しく由美を抱きしめる。
「私、誠司が私のことどう思ってるのか不安だったんだから。」
「ごめん。俺も由美がどう思ってるのか自信なくってさ…」
誠司らしい言葉に由美は思わず笑ってしまう。
「何で笑うんだよ?」
誠司は少しふてくされたように言う。由美は顔を上げ誠司を見ながら、
「ごめん。何か似てるなぁって思って。」
その答えに思わず誠司ももらい笑いをする。
「そうだな。似てるな。」
そう言い終わった後、どちらからでもなく互いに唇を重ねた。
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