図書館で会いましょう
公園までの足取りはまったく覚えていない。由美は気がつくと公園に着いていた。この公園はさほど広くない。誠司が待っているベンチはすぐに見つかった。誠司はベンチに座っている。うつむくように下を向き、両手は強く握るように合わしていた。その様子はいつもの誠司には見えなく、由美は声をかけるのを一瞬ためらうほどだった。
誠司はおそらく足音であろう、何かに気付き顔を上げた。そして由美と視線が合うと表情を緩ませ、
「よう。」
と声をかけた。由美は誠司の様子にとまどった自分を隠すように、
「よ、よう。」
と合わせた返事をした。しかし動揺は隠せなかった。
「まぁ、座れよ。」
いつもの誠司の口調だった。静かに平静な声だった。由美は黙って頷き、誠司の横にちょこんと座る。
二人並んで座った後、しばらく無言だった。いつもはこの公園はこの時間帯でも少しは人影はあるのに今日に限ってはそれがない。由美は心臓の鼓動が誠司に聞こえるんじゃないかと思うぐらいに静かに感じていた。
「悪いな、こんな時間に。」
公園の時計を見ると針は8時を回ったところだった。
「まぁ、まだ早い時間だよ。」
「そう言われればそうか。」
誠司がやっと笑った。その顔を見て由美の緊張の糸も少し緩む。確かに電話をもらってからまだ数十分しか経ってないのにずいぶん時間が流れたように感じる。
「あのさ。」
少し大きい声を出し誠司が急に立ち上がる。さほど大きい声ではないのにそれがものすごく大きく聞こえて由美の心臓は止まるかと思えた。驚く由美をよそに誠司は由美の前に立つ。その手は端から見てもわかるぐらい強く握っていた。
「あの…あのさ。あのぉ…」
誠司は壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返す。
「あのぉ…くそ!」
誠司は自分の頭の後をやけくそに掻いた。これが誠司が困った時にするクセだというのは既に由美も知っている。誠司は深い深呼吸を一回した。そして、
誠司はおそらく足音であろう、何かに気付き顔を上げた。そして由美と視線が合うと表情を緩ませ、
「よう。」
と声をかけた。由美は誠司の様子にとまどった自分を隠すように、
「よ、よう。」
と合わせた返事をした。しかし動揺は隠せなかった。
「まぁ、座れよ。」
いつもの誠司の口調だった。静かに平静な声だった。由美は黙って頷き、誠司の横にちょこんと座る。
二人並んで座った後、しばらく無言だった。いつもはこの公園はこの時間帯でも少しは人影はあるのに今日に限ってはそれがない。由美は心臓の鼓動が誠司に聞こえるんじゃないかと思うぐらいに静かに感じていた。
「悪いな、こんな時間に。」
公園の時計を見ると針は8時を回ったところだった。
「まぁ、まだ早い時間だよ。」
「そう言われればそうか。」
誠司がやっと笑った。その顔を見て由美の緊張の糸も少し緩む。確かに電話をもらってからまだ数十分しか経ってないのにずいぶん時間が流れたように感じる。
「あのさ。」
少し大きい声を出し誠司が急に立ち上がる。さほど大きい声ではないのにそれがものすごく大きく聞こえて由美の心臓は止まるかと思えた。驚く由美をよそに誠司は由美の前に立つ。その手は端から見てもわかるぐらい強く握っていた。
「あの…あのさ。あのぉ…」
誠司は壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返す。
「あのぉ…くそ!」
誠司は自分の頭の後をやけくそに掻いた。これが誠司が困った時にするクセだというのは既に由美も知っている。誠司は深い深呼吸を一回した。そして、